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◆報酬と利益

報酬と利益
一見良く似た言葉ですが全く違います、、、、、

前回は「家を建てるなら建築家に依頼するのが良い」理由として
建築家が様々な要件を統括的に調和させてひとつの形態を産み出す過程について
言及しましたが、今回は職能(プロフェッション)という観点から考えてみます

例えば、ハウスメーカーが得るのは利益ですが弁護士が得るのは報酬ですね
建設会社が得るのは利益ですが医者が得るのは治療報酬です
プロデュース会社が得るのは利益ですが建築家が得るのは報酬です
因みにお坊さんが得るのはお布施で利益とは言いません

報酬と利益、どう違うのでしょう

弁護士が法の解釈で利益を得るとしたらどうなるでしょうか?
利益を得るために都合の良い法の解釈をすることになりますね
医者が人の命を預かることで利益を得たらどうなります?
利益にために人の命を左右することになります
では建築家が利益のために設計したらどうなるでしょうか?
建築の社会性や生命安全を疎かにすることになります
耐震偽装などはその端的な例でしょう

現代は資本主義社会ですから
利益を追求することは正当な行為です
が、生命や権利安全に関わることまで利益中心で考えてよいのでしょうか
利益のために曲げてはならない公平性・公益性・社会性が必要ではないでしょうか
それがプロフェッション(職能)です
*「プロフェッション(職能)」を単に専門知識技能の必要な職業として使う傾向が
ありますがそれは違います

弁護士も医者もお坊さんも、その職能故に
利潤を追求し収益を配当する株式会社などの法人格はありません
建築家もまた職能のひとつですから
得るのは利益ではなく報酬でなければなりません
だから設計報酬と呼ぶわけです
ところが設計事務所には有限会社や株式会社の法人格が沢山あります
税制上のことや保険上の理由からそうしているのかもしれませんが
本来の職能としての筋からいえば馴染まない話です

残念ながら日本の場合は
建築家の存在規定が公的に明確ではなく
管理建築士の存在によって設計事務所であっても建設会社であっても設計監理ができ
また、その報酬も建築士法で提示されているものの現状は遥かに安く
その一方で設計者に責任が重くのしかかってきて
法的にも経済的にも厳しい状況にあります

それでも建築設計に関わる喜びは何物にも替えがたいものがあります
だから職能としての誇りと職責は失ってはならないものだと思います
設計するという行為がそれ程に大切な行為だということであり
建築家はその任を負うているのです

報酬と利益、この違いは大きいとは思いませんか

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