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◆北へ
<p>安い南回りの片道を買ったものだから<br /> 乗り換え乗り継ぎの連続で<br /> しょっぱなから、預かり荷物が空港に忘れられるという事態に遭遇するし<br /> 座席は喫煙席(当時ぼくはたばこを吸っていた)にしたはずなのに禁煙席になってるし<br /> 食事は体内時計とは無関係に何度となく出てくるしでしんどかった。<br /> けど、、、<br /></p>
<p>経由地に着く度に隣の乗客の姿が変わり<br />
それに合わせて空港の雰囲気や空気も変わって行くのがとても新鮮だった。<br />
その分日本はどんどん遠くなっていくのも感じた。<br />
で、20時間以上は飛行機に乗っていたんじゃないだろうか<br />
最終地点のコペンハーゲンに着いたのは、翌日の朝だった。<br />
<br />
置き忘れられた荷物とも無事合流できて一安心のぼくは<br />
初めてのヨーロッパの大地(といっても空港だけど)に感動しながら<br />
とりあえず我慢していたたばこを吸うべくキオスクに向かった。<br />
大好きなキャメルを吸おう、ここは外国だから安いだろうと買ってみたら<br />
24クローネ弱、なんと日本円で500円もするのにはのけぞってしまった。<br />
北欧の高税と消費税の存在を知ったのはこのときだった。<br />
久しぶりのキャメルにクラクラしながらバスを待って中央駅に向かった。<br />
<br />
中央駅でストックホルム行きの寝台列車のチケットを買った。<br />
列車は北の港まで走り、そのままフェリーに滑り込んで対岸のスウェーデン側に渡り<br />
乗りかえることなくストックホルムに向けてひた走った。<br />
海に浮かぶ列車から見る月夜はなんとも幻想的だった。<br />
列車の中は車軸も広く天井高も高かったけど<br />
寝台車とは名ばかりの硬いシートの普通の座席だった。<br />
おまけに背の高い北欧系にスケールを合わせているのか網棚が高く<br />
荷物を上げるのに手間取っていると<br />
隣に座ったアフリカのガンビアから来たという青年が<br />
スラムダンクでもするかのようにぼくの荷物を網棚に置いてくれた。<br />
座って喋っているときはあまり感じなかったのに<br />
立てば198cm、ってほとんど足じゃないか!<br />
<br />
ストックホルム駅に着いてすぐヘルシンキに向かうフェリーのチケットを買った。<br />
待ち時間を利用して、エストべリ設計の市庁舎見学ツアーに参加した。<br />
おそらくレンガや木の素材感からくるのだろう、威圧感よりも温もりを感じる建物だった。<br />
これがナショナル・ロマンティシズムということなのかな。<br />
その後たまたま通りがかった映画館で<a href=
"http://susumulab.com/archives/2005/10/2001.html">「2001年宇宙の旅」</a>
のポスターを発見したので<br />
嬉しくなって思わず飛び込んだ。<br />
でも残念なことに、大きく見えた館内は細分化されていて<br />
上映に割り当てられた部屋は30人程度、スクリーンも見るも無残に小さかった。<br />
だけど平気。頭の中は70mmシネマスコープになっていたから。<br />
<br />
今思うと、滞在を一日延ばしてでも<br />
エスプルンドのストックホルム市立図書館も見ておきたかったと思うけど<br />
当時のぼくはひたすらヘルシンキをめざしていたのだ。<br />
無謀にも、放浪ではなく働き口を探すために。</p>