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◆家相と風水

風水や家相は何処まで誠実に
家族が幸福になる住まいや
健康で快適な住まいづくりに答えられるのでしょうか

まず、占いについて考えてみましょう
「当たるも八卦、当たらぬも八卦」という言葉がありますが
これは至言です

占い師は預言者でも霊能者でもありません
正確にいえば卦を診る「解説者」に過ぎないのです
当たるか当たらないかは責任外というのは正しい見解です

ですから、「地獄に落ちる」とか「守護霊が見える」などと
過度な憶測や脚色を加えて人心を脅かすのは
真っ当な占い師のすることではないのです

お釈迦さんは彼の言葉(スッタニパータ)の中で
無闇に占い人を惑わすことを強く戒めています
人の心は弱く、このような言葉に簡単に惑わされてしまうからです

脳の発達に伴う記憶力や想像力の増加が時間を観念化し
人は過去を記憶し未来を想像することができるようになって以来
不確かであっても確実にやって来る未来への不安と期待が増幅して
占いを必要としたのでしょう

古代中国では、甲骨を火中に入れてできるひび割れで吉凶を占い
ギリシャ時代は、鳥占いや夢占いが盛んに行われました
サラミスの海戦で有名なデルフォイの神託というのもありました
当時は戦場には占い師が随行して戦況を占ったものです

このように、古代の人々にとって占いとは極めて神聖な行為でした
その対象は個人というより国家や都市の運命など公なものでした
古代中国では儒教の重要な書物「四書五経」の筆頭が易経でしたが
これが今日殆どの占いの原点になっています

やがて、運気の強い都市形態を模索して理論化されたのが(陽宅)風水です
この風水の面白いところは、卦を診る占いと地理・地勢・地質・気象など
自然現象に対する科学的な研究とが混合されている点にあります
建築も都市も風水理念の中で人体のような機構(オーガニゼーション)に模して
気の流れを良くする知恵と工夫を組み立てて行きました

その後、占いの部分が世俗的な願望と結びついて複雑化することで
神秘性が増して大きな発展を遂げることになりました

この風水に更に様々な土俗的な宗教観や迷信がミックスされて
日本化したのが「家相学」です

サブカル的には面白いのですが、建築的には不合理な点も数多くあり
これが見えない未来への不安と現世利益願望と絡まっている分
人心を誑かすことも容易にできてしまう点が悩ましいところです

みなさんは「鬼門」という言葉をご存知ですか
家相の本を開いたら必ず出てくる単語で
日本、特に本州においてこの「鬼門」は殆ど絶対的な存在で
この方角(艮=東北)に不浄なものや玄関・門を設けてはならない
というものです

ここに「沖縄風水」というものがあります
中国風水を源流としているのですが面白い特徴があります
それは、沖縄風水には「鬼門」がないということです

そもそも「鬼門」とは何でしょうか
何故、艮(うしとら)の方角が「鬼門」なのでしょうか

これを調べてみますと、いくつかの説が浮かび上がってきます
そのなかには、この方角を陰陽の境界とする説もありますが
中国では冬になると東北から吹きつける強い季節風が
建物や衛生上の問題を起こすので、
これを避けるための禁忌(タブー)として「鬼門」を位置付けた
という風土起因説があり合理的な説得力があります

恐らく強風と「鬼門」というの語感が重なったのだと思います 
が、時間と共に奥に潜む理屈は風化して文字に書かれた意味だけが残り
風土とは無関係に「鬼門=邪気の来る方角」となったのでしょう

ところが、沖縄は台風の通り道ですからどの方角からも強風がやってきます
艮(うしとら)の鬼門など何の意味もありません
結局、鬼門の思想には頼らず、門と玄関の間にヒンブン(屏風石)を設けて
風がストレートに入って来ないように建築的な工夫をしたのだと思います

こうして、家相や風水から迷信や俗信的なものを取り除いて見ると
そこには合理的な理由や真実が見えてきます

家相や風水の本来の目的は、健康で快適に過ごせる空間の創出にあります
そのためには、その場所の地勢、環境、気候を読解分析しなければなりません
従って当然その地方に合った家相・風水があるということになります
そのことを理解してこれらと付き合うことが大切だと思います

最近は、実用書コーナーに並ぶこの手の本も
近代科学や現代的な生活観と上手く共存して
変なものは少なくなっているようには思いますが
それでも、あまりに真剣に家相の本に見入っている人を見ると
少し心配になることがあります
信じることは決して悪いことではありませんが
風水や家相の成り立ちでも説明しましたように
理に適ったものとそうでないものとが混在していますので
鵜呑みにする前にその背景を建築家などに尋ねてみることをお勧めします

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