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◆良い土地、悪い土地

前回は土地の性格を知る(読む)ということの大切さをお話しました。
では、土地の良し悪しはどうやって見極めたらよいのでしょうか?
結論からいいますと、基本的に悪い土地はない、というのがぼくの考えです。

大切なのは、その土地の性格に見合った
合理的な計画・対応ができるかどうかだと思うのです。
勿論、活断層の上だとか急な崖地だとか、或いは河川の屈曲部だとか
土地そのものが持っている地質学上の不安定要因は別ですが。

例えば、斜面地で南から北に下がって陰気だとか
敷地の形が台形とか三角形で不恰好だとか
異様に細長い土地で気持ちわるいとか
入り口が狭く奥が広い所謂旗ざお形の敷地で妙だとか
でこぼこ状態で平たく整備されていないとか
このような土地は普通に建物を建てられない「悪い土地」として
どうしても敬遠されがちです。その分価格も安いでしょう。
でも、建築家の目で見るとこれはもうダイヤモンドの原石みたいなものです。
先ほども述べましたように
その土地の性格を十分に見極めて合理的な対処をすれば
不都合は好都合になり快適な住空間を手に入れることができるのです。

不正形な斜面地は地面と基礎の関係に工夫が必要で
平らで正形な土地であれば楽に建てられるのは確かですが
かといって基礎にお金をかけなくてもよいという訳でもありません。
不正形であるのは何か過去から受け継がれた
歴史的事情みたいなものがあって寧ろ面白味がありますし
斜面地などは地山(元々の地面)である可能性が高く
当然その分しっかりとした地盤であることが期待できます。

こんなことがありました。
ある人が土地を購入したのですが、どうも立地条件が悪く
工事を予定していた建設業者に
「これでは造成しなければ建物は建てられない」と言われ
「ほんとうにそうか?何か工夫はないか?」とぼくに相談がありました。
現地を訪ねてみたらその土地は
二面を道路に挟まれた斜面地で、それも大きな窪地があってなだらかではなく
南には小山があって北側に下がっていて
おまけに、形状は三角形どころか紡錘形をしていていました。

何故この土地を選んだのかご家族に尋ねると
1.地価が安くて広かったこと
2.北にではあるけれど眺望が広がって山並みが美しいこと
3.近くにへら鮒の釣れる池があること
4.会社から車で30分以内であること
5.子供たちの通学距離
ということでした。
三番目の理由が面白いので更に聞いてみると
ご主人はへら鮒釣りが大好きで
家から半径500m程度の距離にへら鮒の釣れる池があることが
とても重要な条件のひとつだった、というのです。
その条件で3ヶ所候補地を見つけたらしく
その中ではこの土地が最も広く風景も綺麗だったので決めたとのことでした。
洒落てるじゃないですか。

で、どう思うかというからぼくは答えました。
まず、窪地は気になるから地下水位を含む地盤調査をすること。
その上で、斜面地であることを活かして造成はしないで土留め兼用の地下室をつくり
といっても片面は地面に接していない半地下状態だから工事の不都合は少なく
そこをガレージ、倉庫等として使ってその上に木造2階建てを造ることにして
地下工事で発生する搬出土を場外に捨てないで敷地内に戻して整地すると
一石二鳥でマイナスは全てプラスになりますよ、と言いました。

その後、正式に依頼があり設計監理をすることになりました。
基本的なアイディアは上記で纏まっていたので
あとは光の入り込み方風の通り具合を検討して計画の全体を煮詰めてゆき
建物は無事狙い通りに完成して現在に至っています。

この文章を書いていて思うのは
今まで施主がこの土地を選んだように思っていたけど
ひょっとしたら、あの土地が彼らを選んだのかも知れないないなあ
ということです。
へら鮒釣りじゃないけど、土地と人の関係もなかなか奥が深いようです。

コメント

はじめまして!
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壱番街管理人
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posted: 壱番街管理人
February 9, 2006 04:32 PM

CINEMALOG どついたるねん コメント欄より続く。

古代の人は、空を飛ぶことも出来ず、下から見上げ、また横から眺め、山から見下ろしたのだと思う。
三輪山から、また二上山から見たと思う。
葛城山から見る大和盆地に、島のように浮かぶ大和三山も、見たことだろう。

良い土地、悪い土地は、無いとして、神に選ばれし土地、神に祝福された土地というのは、あると思う。
パワースポットと言えようか。人々が畏敬の念を抱いた場所。そういう所に神を祀り、神社、寺院を建立し、また、都を定めたのではないか。
短期であったとはいえ、大和三山の中心に大極殿が置かれた藤原京も、正にそうではなかったか。

また、桜井市の箸墓を中心とする、東西200kmの直線(北緯34度32分)を、「太陽の道」と呼び、その直線上に、古代の祭祀遺跡が並んでいるという説がある。
東は伊勢の斎宮址、西は淡路島伊勢の森(伊勢久留麻神社)、この二つの「伊勢」の間に、古代遺跡や、古い由緒を持つ神社が点在していて、共通点は、太陽神の祭祀に関係があり、岩座・岩石が信仰の対象で、女性の祭祀者のイメージが感じられるとされるが、私は、特にヤマトタケル神話に注目したい。
明らかに宇宙的イメージを、彷彿とさせるのである。

其々の人が、其々が所有する土地のカミであるが、より大きなカミ、(宇宙的、力)が、祝福した土地というのは、その周辺エリアも含めて包まれるように、恩恵を受け守られているのではないか。

posted: Hiroshi Iwamoto
July 31, 2006 10:55 PM

改めて読み返してみて
ふと、ひょっとして・・・と思ったことなんですが
へら鮒の釣れる池の近くに建てられた家というのは
作品の中の「美旗の家」でしょうか?

全く見当違いだったら
ごめんなさい。

posted: pukupuku
June 14, 2013 08:25 PM

全くそのとおりでございます。
この家です。
何か繋がるものがありましたか?

posted: susumu
June 14, 2013 11:26 PM

いきなり繋がりました(笑)。

随分前ですが、最初に「美旗の家」を見たとき
ガレージの正面から見た佇まいが何だか可愛くて
とても印象深かったのです。
カジュアルな雰囲気なのに大人の顔がしっかりあって
とても素敵な家だなあ、と。
家の中からの空の見え方がカッコイイです。

一見、不利な条件が全てプラスになったデザインに感動しました。
美しい風景に溶け込んだ素敵なお家ですね。


posted: pukupuku
June 15, 2013 01:17 AM




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