« 改正建築基準法の問題点 < mainpage > 風の通り道 »



◆ハウスメーカーと建築家

今回は、ハウスメーカーの提供する住まいと
建築家の設計する住まいの違いについて考えます。

建築基準法の改正のところでも言及しましたが
ハウスメーカーの住宅は各項目が細かくマニュアライズされていますから
全国何処でも安定した技術と価格設定で対応できる点が大きな利点です。
施工者の能力に期待すると技術差が生じて品質に差が出てしまうので
それぞれプレファブリックな部分を大きくしてその負荷を下げています。
規格を統一して量産化することで価格を安定させています。
これは同時に工期短縮にも繋がり3ヶ月ちょっとぐらいで建物は完成します。

一方、建築家の設計による住宅の場合は、
その人とその場所に相応しいものを創ろうとしますから
基本的には一品生産です。
もちろん、好んで使う材料やディテールの共通性などありますが
かなりの部分がゼロからの出発ということになります。

また、施工者については、特定の施工業者を指名する場合もありますが
競争入札を行って決定するケースが一般的です。
そのほうが競争を経る分コスト面でもタイトな内容が上がってきます。
但し、入札の結果によっては設計の見直しを迫られることもあります。
更に、施工業者が変わるのでその十分な技術力を引き出すために
設計監理上の対応も重要になってきます。
工期も、工程の中で煮詰める内容もあり最低でも4.5ヶ月はかかるでしょう。

こうして見てくると、ハウスメーカーの住宅は面倒くさくなく
価格もはっきりしているし話が速そうで
建築家に頼むと、何かと時間がかかり面倒くさそうに見えます。
事実、そのとおりだと思います。

建築家は、依頼者の生き方や住まい方を理解できないと
イメージが湧かず提案したり設計したりすることができません。
一方ハウスメーカーはどうでしょうか?
規格化していますから、言わばレディーメイドですが
様々なライフスタイルに合わせたプロトタイプを用意しています。
オプションを付けても基本的にはこの枠の中で選択することですから
日本中誰に対しても何処にでも問題なく建設できます。

ここで考えたいことは
「どんな家に住みたいか」ではなく
「どのように生きたいか、どのように暮らしたいか」
ということです。

ハウスメーカーと建築家の、施主(クライアント)に対するスタンスの
違いにも注意しなければなりません。
以前にも書きましたが、ハウスメーカーが施主から頂戴するのは
住まいを提供する代金(=利益)ですが、
建築家が頂戴するのは設計監理報酬です。

この違いをもう少し明確にするために、
司法・立法・行政の三権分立みたいに考えると分かりやすいでしょう。
住まいが成立するには三つの立場が必要です。
施主(クライアント)・設計者・施工者です。
建築家が施主から依頼を受けて設計監理を行う場合は、
それぞれの頂点に、施主・設計者・施工者が分立した三角形が成立します。
建築家は施主の依頼を受けて設計監理を行ないますが
その立場は施主からも施工者からも独立しています(「報酬と利益」参照)。

一方、ハウスメーカーが施主から依頼を受けて住まいを提供する場合は
ハウスメーカーの中に設計と施工が内在していますから結局
施主とハウスメーカーの買い手と売り手という二点間の関係になります。
当然話は直線的で速くなる反面、三権分立的な透明性は薄れるでしょうし
施主への客観的な意見やアドバイスも出難くなります。

簡単に言ってしまえば、ライフスタイルを選択するのがハウスメーカーの家で
ライフスタイルを創造するのが建築家の設計する家だ、ということでしょうか。

やはり大切なのは
「どんな家に住みたいか」ではなく
「どのように生きたいか、どのように暮らしたいか」
ではないでしょうか。

コメント




保存しますか?



copyright(c) 2005-2011 susumulab all right reserved.