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23 12 05

『歴 史』 ヘロドトス

語りたい本はいろいろあって随分迷った。
で、最終的にこのカテゴリーのオープニングとして選んだのがこれ。
今はどうだか知らないが、世界史の教科書で最初に出てくる本はこの「歴史」だった。

でも、読んだのはついこの間のこと。
「歴史」というくらいだから史実を淡々と書き連ねているものと思っていたらさにあらず。
ペルシャ戦争を取り上げた本なのにまぁなんと話が横道にそれること、
まるで司馬遼太郎の「余談ながら」だ。
でも、これが人間臭くて実に面白く噂話やエピソード満載なのだ。
例えばこんな話。
決着のつかない都市国家同士の争いに疲れた指導者たちが知恵を働かせて
双方の代表を百人ずつ出して戦い最後に残った者の国を勝利者とする方法を取った。
なるほど、これなら犠牲者も少なく明快な結論が出ると思うが
そうは問屋が許さない。
最後に残った一人ずつがそれぞれの誤解で自分が最後のひとりだと思い込み
自国に帰って勝利者宣言をしたものだからさあ大変。
双方主張を譲らず、結局争いが再燃して以前にも増して激しい戦いになって
多数の死者が出たとか。もう全く人間というやつはとほほ、みたいな話だ。
或いは、ホメロスの「イリアス」にも名高いトロイア戦争のような
女性をめぐる国同士の争いも地中海を中心に結構頻繁にあったみたいな話とか
肝心のペルシャ戦争は遥かに遠い。
そんな中で、ぼくが特に関心を持っていたのは
当時の「世界」の広さと「歴史」の幅だった。
地球は平らで陸地の向こうにはオケアノスの海が広がり
その果ては巨大な滝となって世界が終わっている
などと短絡的に考えているかと思うとそうではない。
確かに西の果ては海だが
南北東は何処までも陸地が続くし知ってるところまで行くと
必ず更に向こうから見知らぬ人がやって来るから
世界はもっと広いという認識がちゃんと根底にあるし
今から二千四百年前の現在から見た千年二千年前の事物に言及して
人類の起源を考察しているのは感動的ですらある。
決して史実を集めた厳格な歴史書ではないが
その分生き生きとした遥かな過去の現在を味わうことができるのだ。
最後におもしろい話をひとつ。
映画「ラスト・サムライ」の中で
オルグレイが勝元に話して聞かす「テルモピュライの戦い」
この本の中に出てくる。しかも地図付きで。
このはなしは後日「CINEMALOG」でも触れたいとおもう。

posted susumu
12:29 AM | comment(0)