cafe ICARUS

presented by susumulab

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30 01 06

藤田 和孝 作品展

GOPfile-001w.jpg
  期 間:2006年1月19日~2月19日まで
  場 所:Gallery OUT of PLACEにて
  
  高校時代の恩師藤田先生の作品展を観に行った。

先生の描き出す線には変な迷いも作為もない。
サラサラ流れる赤血球のようで、観ていて気持ちがいい。
ぼくが氏の人柄を知るから感じるのか
これほどご本人と一致した線も珍しいのではないか。
なかでも、スエズ運河のスケッチは必見。

posted susumu
07:50 PM | comment(0)

24 01 06

北へ

安い南回りの片道を買ったものだから
乗り換え乗り継ぎの連続で
しょっぱなから、預かり荷物が空港に忘れられるという事態に遭遇するし
座席は喫煙席(当時ぼくはたばこを吸っていた)にしたはずなのに禁煙席になってるし
食事は体内時計とは無関係に何度となく出てくるしでしんどかった。
けど、、、

経由地に着く度に隣の乗客の姿が変わり
それに合わせて空港の雰囲気や空気も変わって行くのがとても新鮮だった。
その分日本はどんどん遠くなっていくのも感じた。
で、20時間以上は飛行機に乗っていたんじゃないだろうか
最終地点のコペンハーゲンに着いたのは、翌日の朝だった。

置き忘れられた荷物とも無事合流できて一安心のぼくは
初めてのヨーロッパの大地(といっても空港だけど)に感動しながら
とりあえず我慢していたたばこを吸うべくキオスクに向かった。
大好きなキャメルを吸おう、ここは外国だから安いだろうと買ってみたら
24クローネ弱、なんと日本円で500円もするのにはのけぞってしまった。
北欧の高税と消費税の存在を知ったのはこのときだった。
久しぶりのキャメルにクラクラしながらバスを待って中央駅に向かった。

中央駅でストックホルム行きの寝台列車のチケットを買った。
列車は北の港まで走り、そのままフェリーに滑り込んで対岸のスウェーデン側に渡り
乗りかえることなくストックホルムに向けてひた走った。
海に浮かぶ列車から見る月夜はなんとも幻想的だった。
列車の中は車軸も広く天井高も高かったけど
寝台車とは名ばかりの硬いシートの普通の座席だった。
おまけに背の高い北欧系にスケールを合わせているのか網棚が高く
荷物を上げるのに手間取っていると
隣に座ったアフリカのガンビアから来たという青年が
スラムダンクでもするかのようにぼくの荷物を網棚に置いてくれた。
座って喋っているときはあまり感じなかったのに
立てば198cm、ってほとんど足じゃないか!

ストックホルム駅に着いてすぐヘルシンキに向かうフェリーのチケットを買った。
待ち時間を利用して、エストべリ設計の市庁舎見学ツアーに参加した。
おそらくレンガや木の素材感からくるのだろう、威圧感よりも温もりを感じる建物だった。
これがナショナル・ロマンティシズムということなのかな。
その後たまたま通りがかった映画館で
「2001年宇宙の旅」のポスターを発見したので
嬉しくなって思わず飛び込んだ。
でも残念なことに、大きく見えた館内は細分化されていて
上映に割り当てられた部屋は30人程度、スクリーンも見るも無残に小さかった。
だけど平気。頭の中は70mmシネマスコープになっていたから。

今思うと、滞在を一日延ばしてでも
アスプルンドのストックホルム市立図書館も見ておきたかったと思うけど
当時のぼくはひたすらヘルシンキをめざしていたのだ。
無謀にも、放浪ではなく働き口を探すために。

posted susumu
08:22 PM | comment(0)

21 01 06

TC-1

もう十年近く前のことだけど、そのころぼくはカメラを探していた。
一眼レフではなく、いつも現場行きの鞄の中に忍ばせるようにコンパクトで
できればズームができて広角で明るいレンズのついた
そんな欲張りなカメラを探していたのだ。

当時有名だったのが元祖高級コンパクトカメラのCONTAX T2。
チタン合金に包まれたスリムなボディにカール・ツァイスのレンズがカッコいい。
でもズームがない、と思っていたらTVSが出た。
惹かれつつも、ちょっとレンズが暗いなァ、とか
レンジファインダーでズーム大丈夫なのか、とか完全には納得できず
TVSⅡ,Tix,G1と、カタログがぼろぼろになるほど飽きもせずに眺めていたのだが
何故か買うところまでは行かなかった。
ある日、現場に行くのに
「きょうは天気もいいから歩いてみるか」と思い立ち
天王寺からプラプラと南に下っていった。
すると、目の前になんか妙なカメラ屋さんが見えてくるではないか。
何が妙って、えらい古びた感じのお店なのに
木製のショーウィンドーの中に入っているカメラやレンズはどれもこれも本格的。
ライカやハッセルブラッドまで並んでいるのだ。
そのズレにすっかり魅了されたぼくは、吸い込まれるように店の中に入っていった。
店内は昔の京都の呉服屋さんにでも行ったような和風な空気。
飄々とした店主がのっそり出てきて、フィルムを買い求めると
ぼくがA3の図面が入る大きな鞄を持ち歩いているのでわかったのか
向こうから、設計やってるのか?と尋ねてきた。
店主は建築のこともよく知っていて、聞けば村野藤吾にも関係のある人らしく
いろいろと興味深い話をしてくれた。
ひとしきり喋って別れ際に、カメラ選びのことを尋ねてみた。
このときには、デジカメの一眼レフにしようかとさえ考えていたのだ。
すると、あっさり「ミノルタのTC-1がいいよ」という返事が返ってきた。
知ってはいたけど、いまひとつピンと来ていなかったカメラだ。
でも、その返事が気になって今度はよく行くスタジオの小野さんにも聞いてみた。
これも「TC-1がいいよ」という返事。
結局、ぼくはそのカメラを買うことにした。
値段はまだそれほど下がっていず高かったが、十分すぎる価値があった。
建築的でさえある美しいフォルム、切れのよいロッコールレンズ。
隅々まで行き届いた完成度の高さにはただただ脱帽するよりない。
名機とは正にこのことだ。
しかし時代は容赦なくデジカメの方向に流れて行く。
CONTAXは既になく、ミノルタはコニカと合併してコニカミノルタとなり
更に昨日の新聞では、同社が銀鉛カメラから撤退することを報じていた。
寂しいかぎりだが
ミノルタTC‐1の名がカメラ史から消えることはないだろう。

posted susumu
03:33 AM | comment(1)

13 01 06

捏造と偽装

ソウル大学教授によるES細胞の研究論文捏造事件や
世間を震撼させ建築業界に深刻なダメージを与えている
構造計算書偽装問題について、よく「性善説」や「性悪説」が取り沙汰されるが
ぼくには、その理由が全く分からない。

一方は学界、もう一方は建築業界の出来事だし
捏造と偽装では全然意味が違うから
これらの事件を一緒にすべきではないのかもしれない。
でも、過去にあった「神の手」による旧石器遺跡捏造事件や
ベル研究所の「若き天才」による超伝導の研究論文捏造事件を見てもそうだけど
新しい発見を期待されたからとか圧力があったからとか
捏造や偽装の原因をあれこれ探っても
問題は当事者であるその人個人の倫理観に尽きるのではないか。
また、それらを見抜けなかった理由も
名声や状況を鵜呑みにして検証・確認を怠った
組織や人間の問題に過ぎないのはないか。
「嘘をつく」「ごまかす」「騙す」という行為は、「笑い」と同様に
極めて人間的な情動であって「性善説」や「性悪説」の問題ではないだろう。
例えば、数学の世界に捏造はあるか?
ないでしょう。
いや、仮にあったとしてもそれを客観的に検証・追認できないと
証明にも定理にもなり得ない。
そうする理由が、数学者=「性悪説」にある訳では勿論ないはず。
「性善説」や「性悪説」の本質はもっと別のところにあるし
安直に使うべきではない。

posted susumu
04:14 AM | comment(0)