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presented by susumulab

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08 10 11

全地球カタログ(Whole Earth Catalog)


実のところ、この本を手にしたことは一度もない
中学生の頃愛読していたSFマガジンに
この本の特集が載っていたのだ
暗闇にぽつんと浮かぶ全球の地球だけの表紙
そしてその斬新なタイトル
全世界をカタログで網羅する壮大なアイディアに
ぼくは完全に魅せられてしまった


あちこちの本屋に行く度にふと思い出しては
本棚を探したが見つかることはなく
(日本語版の出版はなかったとおもう)
また、ときにはそれと似たタイトルの本を買っては
中身が違いがっかりしたこともあった

この本は、というよりこのカタログは、
世界中の商品(編集者のポリシーに適ったものに限る)がレイアウトされ
勿論購入することもできるのだけどその対象が全地球であるということ
ある意味、18世紀の世界史に登場するディドロやダランベールの百科全書派
『銀河帝国の興亡』のエンサイクロペディア・オブ・ギャラクティカみたいに
来るべき時代のために
節目となる時代を「記録する世代」の象徴にも見えて強烈だった

SFの世界では既に地球連邦や一国としての地球が存在していたけど
70年代の地球は冷戦構造の中を激しく迷走していた
妙な無力感と諦観に包まれていたような気がする
その時代にこのカタログは全世界を相手にしていたのだ
そこには国境などなく物と情報の行き交うただひとつの丸い地球があるだけだった
これはどう見たってインターネットの世界だ
(と思っていたら、なんとこの本のネット版が出版されている!
いやはや凄い時代になったものだ)


数年前、
意外なところでこの本と再会した
スティーブ・ジョブズ氏が行ったスタンフォード大学でのスピーチを
ネットで見つけて聞いていたときだった

僅か15分にも満たないそのスピーチは
あまりにも鮮烈で簡潔で感動的なものだった

3つの大切なこと
「人生に関係のないものはない」
「本当に好きなことをやれ」
「死の意味と価値を忘れるな」
を語ったあと、
彼はこの「全地球カタログ」に触れ
その最終号の裏表紙に書かれていた
スチュアート・ブランドの言葉を紹介して締めくくる

Stay hungry, Stay foolish.


哀悼

posted susumu
11:34 PM | comment(1)