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presented by susumulab

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23 12 10

最後の誘惑

最後の誘惑 [DVD]




もう何度観たことだろうか

人間イエス・キリストの心の葛藤が
そのまま映像と圧倒的な音楽になって
観る者の魂を激しく揺さぶる


この映画は、マーティン・スコセッシが
イエス・キリストを生きた人間として
その苦悩に満ちた波乱の人生と
最後の瞬間に彼の前に差し出される美しくも残酷な誘惑を
赤裸々に描いてゆく

神に選ばれしもの
それ故の栄光と苦悩
そして命をもって達成される神の使命

何故彼が選ばれたのか
何故彼は苦しまなければならないのか
そして最終的には命を差し出すことによってしか
購えない罪とは何なのか

映画は中近東の砂漠の原野を舞台に展開してゆく
放浪時代に訪れた死海やエルサレム、ナザレの風景が
独特の音楽とともに蘇ってくる
あの懐かしくも荒涼たる風土こそが
乾いた人間のこころに
博愛の手を差し伸べようとした稀有のひと
イエス・キリストを生んだのではあるまいか

キリスト教社会のヨーロッパでは
具体的に描くことすら憚られるイエス・キリストを
(「ベン・ハー」で登場するイエス・キリストの顔が映ることはない)
真正面から生身の人間として描いたマーティン・スコセッシ監督の
勇気と深く真摯な思いが胸を打つ。
また、イエス・キリストを「西方の人」と呼び、
ひとりの詩人として評した芥川龍之介を思い出す。

人間イエスを全身全霊で演ずるウィレム・デフォー
初めは何処か違和感を抱いてしまう彼の姿形も
やがて「その人」として見えてくるから不思議だ
そして、何といっても
ユダ役の怪優ハーベイ・カイテルの演技が見事だ
彼もまた大きな苦悩をかかえ
こころを鬼にして
神の使命を達成すべくイエスを十字架に導いてゆく

そして磔刑されたキリストが最後に見たものとは、、、、

全編に流れる
ピーター・ガブリエルの曲が本当に切ない
胸を打つ
こころがざわつくとでも言おうか
穏やかではいられない何かが心の中に沸き起こってくるのだ
今でも、無性にこの音楽が聞きたくなる


明日は聖夜

posted susumu
11:40 AM | comment(3)