cafe ICARUS

presented by susumulab

« 「谷町界隈」その後 < mainpage > 黒アゲハ »


◆どついたるねん

どついたるねん デラックス版




この映画は避けて通れない。
技や芸に神が宿る奇跡の瞬間がある。
『どついたるねん』は、そんな奇跡を起こした映画のひとつだ。

この映画は阪本順治の脚本による初監督作品で
主人公安達英志に扮する赤井英和は
実際に本人が歩んだ、鮮烈で短いボクシング人生を
そのままに炎のように演じきる。
それは演技を超えた演技で、観る者の魂を掴んで離さない。
こちらまでどつかれている感じで圧倒される。

本人がモデルになっている人物を演じるのは簡単なことではない。
むしろ変な作為が入ってぎこちないのが普通なのに
この赤井英和という人は天性の役者なのだろう
そんなことなど苦もなく乗り越えてしまう。
これが俳優としての殆どデビュー作なのだから凄すぎる。
勿論台詞廻しや演技に拙いところがあるけど
そんなことはてんでへっちゃらどこ吹く風で
どんどん突き進む。そのハイテンションなリズムがまた格好いい。

当時、リング上での事故により
大好きなボクシングを諦めなければならなくなって
これからどうするか悩んでいたときに舞い込んできたこの映画の話に
ふつうなら怖気づくところを、ここがチャンスとばかりに
彼は全身全霊を込めてぶつかって行くことを決め、絶賛を勝ち取る。
事実、彼はほんとうに自分の人生をこの映画に賭けていたらしい。

そんな赤井英和の滅茶苦茶なパワーに引っ張られたのか
脇を固める俳優陣の演技がまたいい。泣ける。泣けます。
気の弱い親父と浪花の母ちゃんは笑福亭松之助と正司照江で
「ちめたい」変な病院長は芦屋小雁。
左島を演じる原田芳雄と赤井の掛け合いは
不思議な間で、思わずハマってしまう。
小さなボクシングジムのオーナー役の魔赤児が喫茶店「花園」で食べる
煙モアモアのトーストが何とも妖しい。関西には今もあんなオッチャンがいる。
そして相楽晴子が勝気でかいらしい(「かわいい」ではない)。

細かいところまでしっかり作ってあるので
しゃべりたいことは一杯あるけど今は止めておこう。
観たことないひとは、いっぺん観て。
観たことあるひとは、ひさしぶりに観てください。
16年ぶりにDVDで観た『どついたるねん』は
そんなはずもないのに何故かちょっと色褪せてみえたけど
フィルムの中の主人公たちはあのときのままで
ぼくは、前にも増してボコボコにされた気がする。

因みに、この映画の熱いおしゃべりがきっかけで
『シネマな夜』 は生まれたのだった。

posted:susumu120306

コメント

同感であります。赤井さんのファンであります。
その後の天王寺を舞台にした将棋の映画も格段に良かったです。赤井さんはこの映画から飛躍的に役者になったと思います。そうとうご苦労されたであろう事を想像します。

posted: 大賀信幸
March 31, 2006 06:00 PM

赤井英和が、生来持ち合わせているところのパワーというものについては、一定の評価が与えられるとして、また別に論じることとし、ここでは、敢えて別の視点から、私的に、独断的に(偶然は在り得る筈は無く、必然とも言えるが)麿赤兒について、話してみたい。

麿赤兒、この人物、大駱駝艦を主宰し「BUTOH」として海外公演でも知られている。
私は、美術とはクロスオーバーするということもあり、1970年代には名前を知っていた。

しかし、奈良県桜井市出身であることは、後に知ることとなる。しかも高校の先輩らしいのである。
現状維持で良しとし、保守的、事なかれ主義的な考え方が大勢を占める奈良に於いて、最初から東京を志向していたことは特筆に価する。

ちなみに阪本順治監督は、大阪府堺市生まれで横浜へ行っている。

私は(1989年10月)「怪談・海印の馬」/於:桜井市民会館を見た。このとき近くに住んでいてチラシが入っていた。これが凱旋公演で、確か入場無料だったように思う。

入り口の両側に大きな篝火が焚かれていた。
自由席なので最前列の右側の方に席を取った。
白ずくめの化粧の匂いと、息遣いが、リアルに感じられた。
この猥雑でグロテスクな舞踏については、強烈な衝撃と印象を受けた。
自分では理解出来たものと思っている。
いろんな人が見に来ているので、中には下卑た笑いをする人もいた。もちろんそれも狙っている処であろうが。

映画については、今認識しているのだが、ツィゴイネルワイゼン(1980)、陽炎座(1981)を、当時見ている。原田芳雄も良かった。
月はどっちに出ている(1993)は、LDで見た。
TVドラマでは、葵徳川三代(2000年NHK大河ドラマ 島津義弘役)が、印象に残っている。

さらに関連して、「通天閣の歌姫」として有名になった、叶麗子も奈良県桜井市の出身であり、王手(1991)に、出演している。

桜井市は、飛鳥時代以前に都があった地であり、興味深い事柄がいくつもあり、その中で、日本芸能の発祥の地というのがある。
「日本書紀」の推古天皇20年、時の摂政聖徳太子が、「桜井」にて、我が国の少年を集めて、伎楽の舞を習わしめたとしるす。
桜井の、児童公園内に「土舞台」の顕彰碑があり、、「土舞台」は日本最初の国立劇場であり、また、太子は国立演劇研究所をも併置して芸能文化のために、尽くされたということである。


平城遷都1300年記念事業が進行中であるが、本当にDEEPなNARAは中南和地域にある。

posted: Hiroshi Iwamoto
July 17, 2006 09:41 PM

そうか、
麿赤兒とイワモト君の間にはそんな関係があったのか。知らなかったなあ。
ところで、桜井はたしかに面白い場所だと思います。
鳥見山から見る桜井から橿原にかけての風景は
ピラミッドのように浮かぶ大和三山も謎めいて
美しいですよ。

posted: ssm
July 22, 2006 06:49 PM

榛原の鳥見山から大和三山が見えるのか。
それは知らなかった・・・。

住まいづくり講座 3.良い土地、悪い土地 コメント欄へ続く。 

posted: Hiroshi Iwamoto
July 31, 2006 06:02 PM

久しぶりでイカロスさんにアクセスさせていただきます。相変わらず文章長いのは一緒かな。

短く書くつもり赤井さんの名前は英和でっせ。赤井英和辞典という本もあるんですよ。持ってることが赤井ファンの証し?!。私の、赤井の赤い糸は本当にあったと思う。知り合いの知り合いが知り合いやったり、座長公演の初舞台の脚本を書いた先生と義太夫教室の席でとなりどうしやったり、赤井さん企画のおかんカレーの優勝者は、赤井友達の友ダッチだったり。どや。シネマな夜もそろそろあつまらないとね。

posted: bachmoon
December 9, 2006 10:59 AM

あっそうか!英和辞典の英和だ。
こらえらいすいません。
早速訂正します。
それにしてもお久しぶりですね。
ところで
この近くにボタン館できてますよ。
ピアスさん関係おありなのかなぁ?

posted: ssm
December 9, 2006 02:41 PM




保存しますか?



copyright(c) 2005-2011 susumulab all right reserved.