cafe ICARUS

presented by susumulab

« ノートルダム寺院 < mainpage > ダッタン人の踊り »


◆評決―ポール・ニューマンに捧ぐ―

評決


ハードボイルド好きなら
『動く標的』の探偵リュー・アーチャー
『タワーリング・インフェルノ』の有名建築家という役もある
代表作を数え上げたら切りがない
でも、ぼくはやっぱりあのアル中の弁護士が好きだ

嘗ては優秀な弁護士だったが
ある裁判の不正に巻き込まれてからすっかり評判を落してしまい
今や依頼もなく酒浸りの日々
新聞の死亡欄を見ては葬儀に顔を出して名刺を配る体たらく

その窮状を見かねた友人が仕事を持ってくる
手術中に嘔吐して窒息した女性が植物人間になってしまったのだ

介護している妹夫婦も望んでいることだから
示談交渉をして金で解決すればよいことだったが
この事故は明らかに医療ミスであり
その罪が問われないまま病院のベッドに廃人と化して横たわる女性の姿をみて
消えかけていたギャルビンの心に火がつく

しかし、それはあまりにも無謀な挑戦だった
相手は大病院でミスを犯した医者も一流なら顧問弁護士も一流
彼らは名声も金も力も十分過ぎるほど持っていた

何度も挫けそうになりながら
友人と彼女の応援を支えにこの圧倒的な力に立ち向かって行くギャルビン

シドニー・ルメット監督の名作、『評決』である

ポール・ニューマンとくると
若い頃はちょっとやくざでクールな二枚目、というのが定番だったと思うけど
この映画では、カッコ悪く情けない中年の弁護士の役が実に見事に演じられていて
まさにオスカー賞ものだ
ところが、その年は『ガンジー』に持っていかれてしまい
彼がオスカーを貰うのはずっと後のことなのである

病院側の顧問弁護士コンキャノン役のジェームズ・メイソンの演技も
どっしりと重厚だしシャルロット・ランプリングも良かったなあ


ポール・ニューマンは数々の映画に出ていろんな役を演じた人だけど
彼がこの弁護士役の中で見せた良心や理性そして勇気は
演技というレベルを超えている気がして
実際の彼も恐らくこんな人なのではないかと勝手に思っていたが
訃報を機に彼のプロフィールを読んでみてそれは確信に変わった

それにしても
朝のバーでビールに生卵割ってグイッと一飲み
やってみたいような、、、、、

posted:susumu061108

コメント

やっと観る事ができた映画。
嬉しかった。

けど、こんなダメダメなポール・ニューマンを見たのは
初めてのような気がする。
面白かったというより考えさせられた映画でした。

道徳を説く側のカトリック教会系の大病院が
明らかな医療ミスを認めない。
最初に『正義』の為に証言すると言った医師が
被告側の弁護団に取り込まれてカリブに逃げてしまう。
何とも皮肉な設定でした。

本気で植物状態になった女性の為に立ち上がったギャルビンも
最後まで自信が無さそうだし、
証人を探し出すために平気でいっぱい嘘つくし、
窮地に陥って彼女の前でボロボロになっちゃうし、
裏切られてもっとボロボロになってしまう。
それが返ってリアリティーがあって
うまいなぁ、って思いました。

唯一、結末を示唆するような言葉を証人の黒人医師が
言っているけどギャルビンは気がついた様子もない。
(結果的にはそうなるのだけど)
結局、法律のプロ達がいくら『正義』をこねくり回しても
普通の人達(陪審員)の方が『真実』を
見抜く目を持っていた、ってことでしょうか。

シャーロット・ランプリング、美しかったですね。
DVDのチャプターでは『ローラとの再会』と
あり、元奥さんとも思ったけど
ベッド横のフォトスタンドの写真とは違ったような・・・
彼女なのか元奥さんなのか、どっちでしょう?
それによって見方がちょっと変わりますよね。

ポール・ニューマンのピンポールゲームをする横顔がとても印象的。
そして最後が粋でした。
派手な映画ではなかったけど奥が深い、そんな名作だったと思います。

posted: pukupuku
February 28, 2012 09:20 PM

確かに「妹夫婦」でしたね。
ご指摘ありがとうございます。
訂正しておきます。

病院で植物人間となって横たわる
依頼者の姉の姿をポラロイドカメラで撮っているとき
彼の心に、戸惑いと恥、怒りと畏れがない混ぜになった感情が
写真の現像までの時間とシンクロして
じわじわと湧きあがってくるシーン。
シドニー・ルメットの演出とポール・ニューマンの演技が素晴らしいです。

仰るように、ギャルビンは勇猛果敢なヒーローなんかではありません。
心の弱さ丸出しの、ボロボロの人間です。
でも、だからこそ失ってはいけない大切なものとは何なのかを
考えさせてくれる彼の演技は本当に凄いと思います。

「ロード・トゥ・パーディション」のポール・ニューマンもいいですよ。
機会があればご覧になってください。

posted: susumu
February 29, 2012 05:38 PM

ポラロイドの写真はそういう意味だったのですね。
肝心なところがちゃんと理解出来てなくて
恥ずかしいコメントを書いてしまった未熟者の私です。

正直言うと今回、何故か気が散ってしまって
(細かい所なんですが、ちょっと嫌悪感を感じてしまって)
ICARUSさんが書いてくださった要の部分を
うまく感じ取れなくて、ちょっと自分でもどうしたんだろう、と思ったのです。

ギャルビンが必死に再起をはかろうとするところでも
何故か「凄い」と思えなくて。
勿論、これまでのヒーロー的なカッコ良さを
見事に消してしまったポール・ニューマンの演技は見事だったと思います。
裁判が終わった後、吹き抜けのところでローラを見つめる
あの目、あの表情がたまりません。
すっかりあの表情のポール・ニューマンがインセプションされてしまいました。
この時、57歳。いい顔になってますよね。

今度は邪念を取り払って真っ白な状態で
再度観てみようと思います。
『ロード・トゥ・パーディション』、もちろん観ます!
ありがとうございました。


あ、そうそう
ローラって『ヴェルマ』ですよね?!

posted: pukupuku
March 3, 2012 06:19 PM




保存しますか?



copyright(c) 2005-2011 susumulab all right reserved.