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◆ブレードランナー・ファイナルカット

ブレードランナー 最終版
←こちらは「ディレクターズカット 最終版」のジャケット


ぼくはネットをチェックするまで知らなかった
この映画がカルトムービーと呼ばれていて
こんなにも沢山のフリークがいることを

1975年の日本初公開を観、リバイバルを観、完全版を観て
VHSを買い、DVDも持っていてそれらを何度も観返し
それでも「ファイナルカット」と言われたら迷わず観に行く
そんなアホな奴はぼくぐらいのものだろう、と思っていたらとんでもない
ぼく以上のフリークがワンサカいるではないか

彼女が久しぶりに大阪に来たので
「映画でも観に行こうか」ということになって
飛行船が好きなぼくは「スターダスト」を勧めてブルグで待っていたら

ズンチャカ、ズンチャカ、ズンチャカ、ズンチャカ、パーーパーーパーー♪

あれ?何でヴァンゲリスが?えっファイナルカット?しかも二週間だけって!
何も知らなかったぼくはすっかり驚いてしまった
翌日の夕方、
ぼくは再びブルグに来ていた

入りはそれ程でもなかったけれど、
この画面をひとりで観ているのかと思うほど雑音が一切なく
客席全体がこの映画をリスペクトしているのがジンジンと伝わってきた
エンドクレジットが終わるまで席を立つ人はいなかった
いや、一人いたけど戻ってきた
終わってからの反応がこれまた凄かった
「観た?観た?観た?あそこのシーンよかったねえ」
「あの場面はあんなにクリアーやってんなあ」
などと結構年配のグループが興奮冷め遣らぬ感じで話し合っているではないか

嬉しかった
帰って、他の人はどうだったんだろう、と思ってネットを覗いてみると、、、、
もう、フリーク、フリーク、フリーク
涙しながら4時間ぐらいあちこち訪問した
今更ながらこの映画の持つポテンシャルの高さに感動した次第

映画の中に出てくる三次元解像スキャナーみたいなものでチェックすれば
殆どの映画は直ぐに画像が荒くなって底が見えてしまうけど
この映画は何処までも解像できる
途中で寄り道したってどんどん行けてしまう
こんなに被写界深度の深い映画は他には
スタンリー・キューブリックの『2001年宇宙の旅』くらいだろうか

最近ではクリストファー・ノーランにその雰囲気を感じるが
これはつまりその映画の中に世界がきちっと描かれているということだ
何処までも解像できるということはリアリティーの証だから
名作と呼ばれる映画にはこの「世界(観)」がある
それが映画に生命を吹き込み時代を超えて生き続けてゆく

これはデザインにも言えることだ
「世界(観)」のないデザインは結局時代に迎合せざるを得ず
時代と共に終わるしかない

放浪時代、中近東のバザールやスークに行く度に
デジャヴュのようにブレード・ランナーの世界を思い出していた
いや寧ろあの映画でクレオール化した猥雑な都市の魅力に
目覚めたと言ってもいい
ダチョウこそ登場しなかったけど
何でも有りな雰囲気は映画に負けていなかった

映画について今更言うべきことはない
「ディレクターズカット」で編集したものが映画としての最終形であり
今回の「ファイナルカット」は画像の精度を上げることと
細部の描き込み修正を加えたというところか
それも所謂デジタル加工したというより
元々の深み(70mm)を正しく表面化させたといったほうがいいみたい
霧が晴れたような感じだが、それ自体が感動ものだ

後年、リドリー・スコット監督が『ブラック・レイン』を大阪で撮るときに
エキストラで参加する機会を得て
初めてメガホンを持つ監督の姿を目の当たりにしたとき
妥協のないその撮影態度に本当に感激した
自分もかくありたいと思った

これ以上のヴァージョンはもうない、
と気を許しているけど
ひょっとして
『ブレードランナー・ファイナルカット3Dヴァージョン』
なんて出たらどうしよう
たまらんやろなあ
いやあ、こりゃあるぞ

あちこちネットを覗いていて
デッカード・ブラスターを克明に復元して行くブログを発見したときは
鳥肌立ちました
凄い情熱 高い美意識 素晴らしいの一語 欲しい

posted:susumu271207

コメント

週末に次男(大学生)が「最終版」を
借りてきてくれた。
(ファイナルカットは無かったそうだ)
20年以上前に初版をTVで見て何となく記憶に
有るのは「ハリソン・フォード、レプリカント、暗い映像」

最終版を夜中の1時過ぎから見始めた。
びっくりした  こんなに奥が深くて哲学的な
ストーリーの映画だったのか
ただのSFじゃなかった。

映像も全然古さを感じなかったし
こだわって創ったであろう背景は
日本のテイスト満載で不思議な空間だった。
ダチョウ、いましたね。
台詞が少なくても映像と表情だけで
充分伝わった。

いい映画でした
真夜中に涙のスイッチが入ってしまい
大変だった。

で、疑問が残るんです。
デッカードは「レプリカント」だったって事ですよね?
本人はそれに気が付いたのか、そうだとしたら
何時? 最後? もっと前?
レイチェルが「そのテスト、自分でした事ある?」
って聞きますよね
レイチェルは何時、何で気が付いたのか?
(初歩的な質問ですみません)

そんな疑問が頭でグルグル回ってしまい
寝つけない程いい映画だったって事かな。
ファイナルカットも絶対見るぞ。

posted: pukupuku
May 13, 2008 02:05 PM

ダチョウいたでしょ。
それにしてもpukupukuさん
嬉しいとこ突いてくれますね。
僕なりに知っていることをお応えします。長文になることをお許しください。
1.  ファイナルカット(以下FC)のレンタルDVDがなかった。
当然だと思います。というのも、FCのDVDは日本で10,000部限定販売の
アルミテッドBOX(究極版:劇場公開版からFCまでのDVD総てを網羅)
のみに入っているからです。買いそびれました。
映画はこのプロモーションを兼ねて公開されました。
確かカンヌだったかの映画祭で上映したら、
反響が良かったので公開することになったとか。
従って、映画館に行ってもパンフもグッズもなく、
東京での初日にはチラシと「強力ワカモト」が配られたそうです。
本文でも触れていますが、その映像のクリアなことに驚嘆します。
映画館で観て欲しかったです。
2. デッカードはいつ自分がレプリカントであることに気付いたか?
フリークのブログでも議論百出ですけど、僕の見解は至ってシンプルです。
彼がユニコーンの夢を見(脈絡がない、不思議)、最後にレイチェルと逃げるシーンで
折り紙のユニコーンを見て、初めて彼の夢を誰かが知っている
(それは既に彼の記憶が人工的なものである(=レプリカント))ということに
気付くのです。
正直いいますと、最初の頃、僕はデッカードがレプリカントだとは
思っていませんでした。
何故なら、劇場公開版にはデッカードが夢見るユニコーンのシーンが
なかったからです。
監督は嫌ったけど、僕はこの劇場公開版(ナレーション付きのやつ)も好きです。
3.レイチェルは何故・いつ自分がレプリと気付いたか?
デッカードが行ったVKテストだと思います。
あのとき彼女は初めて不条理な物語に過剰反応して
抑制が利かなくなる自分の感情に疑問を抱くのです。
そしてデッカードを訪ねて誰も知らないはずの記憶を語られ
自分が人間ではないと知るのだと思います。

この映画は本当に傑作です。
その世界観の深みを映画に出てくる写真のスキャナーに喩えましたが、
リドリー・スコット監督の描いたあの無国籍で強烈な都市風景を超える映像は
未だにありません。
メカや都市風景のデザインはシド・ミード、コスチュームはメビウス、
音楽はヴァンゲリス。総てが超一級です。
デッカード・ブラスター(拳銃)やスピナー(ポリスの車)は勿論、
この映画は細部までしっかり作り込まれています。
透明でウォッカみたいなお酒「チンタオ」もボトルもグラスもすべてオリジナルです。
「二つで十分ですよ」の屋台の前で待っているときに読んでいる新聞も
この映画用に作っています。お金もかかるし異常にも思えますが、
デザインとリアリティを考える上で大変重要なことです。
黒澤明監督が『赤ひげ』(観てないのですが)で
引出しのいっぱいある見事な薬箪笥をバックに
三船敏郎扮する医者が薬を調合するシーンを撮るとき、
薬箪笥はあくまでも背景で薬を取り出すシーンなど全くないのに
全部の引出しに実際に薬を入れさせたといいます。ここですよね。
あかん、つい熱くなってしまいました。
映画、楽しんでください。

posted: ssm
May 14, 2008 12:12 PM

早速お答えくださってありがとうございます。
胸のつっかえが取れました(笑)。
そうか・・・ファイナルカットは見れないか・・
残念です。

でも、この映画の背景は本当に「創りこみ方」が
すごいです。他のSF映画とあまりにもレベルが違う。
何度も戻って見てしまいました。
その事を細部にわたって知り尽くしている
ICARUSさんもすごすぎる。
でもそういう細かな部分を聞くとワクワクしますね。

デッカードが気づいたのは、やっぱり最後でしたか。
説明してもらってよく解かりました。
すみません。私の質問の仕方が曖昧でしたね。
レイチェルが「デッカードはレプリカント」だと
気がついたのは何時なんだろうという事なんです。
「そのテスト、自分でしたことある?」って言ったのは、
特に意味は無かったのかな・・・。

かなり前に、多分20年以上前かな
「誰かに見られている」というサスペンス+抑えた感じのラブストーリーなんですが、
何故か好きで記憶に残っているのです。
(友達とかに聞いてもみんな知らないって言いますが)
トム・ベレンジャー  ミミ・ロジャース(トム・クルーズの前の前の奥さん)
監督はリドリー・スコット氏でした。
(先ほど調べるまで監督がリドリー・スコットとは知らなかったから)
ちょっとびっくり。

posted: pukupuku
May 14, 2008 03:07 PM

「テルマ&ルイ-ズ」なんてのもありますね。
「グラデュエーター」もあるし本当に達者な監督さんです。
元々はCFで腕を鳴らした人らしく、光の使い方やアングルの決めが抜群です。
答のほうは的外れでしたか?
やはりレイチェルは最後まで気付いていない、と思います。
彼女の質問はデッカードに対する疑念というより
自分自身の不安からというところでしょう。
前のコメントでも書きましたが、初回劇場公開版はユニコーンのシーンはありませんし、
ハードボイルド風にナレーションが入っていて
人間対レプリカントの戦いといったチープな構図になっていました。
試写を観て、プロデューサーが「これじゃ売れない」と思って変えさせた所為ですが、
これが後に数々のバージョンを産むことになるのですから面白いものです。
初回劇場版のラストは、酸性雨の降り続くLAを逃れて青空の下、
ヴァンゲリスの曲をバックにレイチェルとロッキー山脈を走るのですが
この空撮、何処かで観たことありません?
キューブリック監督が「シャイニング」のために撮っていた
膨大なフィルムを貰って急遽作ったものです。
最後に、カンヌではなくベネチアでした。

posted: ssm
May 21, 2008 03:20 AM

初心者の質問に丁寧に答えてくださってありがとうございます。
いえ、的はずれな質問をしたのは私の方です。
思い込みで主語の無い変な質問をしてしまい、
申し訳ありません。ICARUSさんの答えで納得できました。

もうひとつ、聞いていいですか?
「ブラックレイン」にエキストラで出たって書いておられましたよね。
どういう経緯で出る事になったんですか?
役者志望だったとか?
現場はどんな感じだったのですか?
ぜひ聞いてみたいです。よろしくお願いします。

posted: pukupuku
June 9, 2008 05:47 PM

この顔で役者は無理、
にしても映画作りには興味がありました。

「リドリー・スコットが大阪を舞台に映画を撮る。一般からエキストラ募集!」
(ぼくは、つい「ルドリー」と書いていましたが「リドリー」の誤りでした)
という情報を新聞で見て狂喜し
当時、嘱託で働いていた設計事務所の映画好きの所員と
所長(先生)も参加の軽い乗りで履歴を書いて応募しましたが
冗談で応募した先生だけが受かったのでした。

その後、撮影スタッフから「エキストラが足りない」と聞いた先生が
「まかせろ」と言ってぼくたちを誘い入れてくれたことで
二度とない貴重な経験をさせてもらうことになったのです。

この先生は「東京デザイン」の講師だった人ですから
pukupukuさんもご存知かもしれんませんよ。

朝早く召集されて、作業員の服装に着替えさせられ
大型バスに乗せられ撮影現場まで運ばれるのですが
一台や二台ではありません。2台ずつ何組かに分かれていました。
それらが数珠繋ぎで呼び出しがかかるまで待機です。
車外に出ることは許されません。
弁当食ってただ待つだけです。

ようやく声が掛かって、現場に出向いたら、
何と目の前にいるではありませんか!
あの『ブレードランナー』の監督が!ですよ。本物が!ですよ。
それだけでもう興奮してしまいました。
今思うと、
高倉健やあの松田優作もいたはずなのですが、、、、、、、

監督はどうも納得できないのか、
同じシーンのTAKEをどんどん重ねて行きました。

もう陽も大分傾いてきました。
どうするんだろう、と思っていたら
このシーンを全て逆の方向から撮り直したのです。
監督の一声で、人も器材も大移動。でも文句言う人は誰もいません。

篤い信頼と尊敬、そして期待。それしかありませんでした。

結局、本編では最後のTAKEを使っています。
この厳しさ、凄いです。

また、別の日
エキストラの声が掛かって、深夜の心斎橋に出向きました。
今度は、キリンビルでのシーンです。
でも、また待機。あんまり退屈で配給のあんパン死ぬほど食べました。
朝方まで待ちましたが、結局出番なし、ってただのエキストラですから。

群集誘導が上手く行かなかったこともあって
思うように撮れなかったのか
このシーンは殆ど総てが没、LAで撮り直ししたとのことです。

映画にお金がかかるのがよく分かりました。

どのシーンに出てるかって?

長くなりました。そのあたりは、またの機会に。

posted: ssm
June 10, 2008 06:48 AM

きゃぁ~~!きゃぁ~~!きゃぁ~~!

本物、見たんだー! いやぁ~すごいな、いいな!
そういう現場だったんだ。あの現場にいたんですねー
ひとごとなのに感激してしまう。

その先生ってH中先生ですよね。
(NYで個展をされたという)
私、一年の春休み、その事務所に少しだけ
バイト行ってました。
地下鉄の中津の駅から、狭い路地を入って行った所ですよね。
学校の事務所のお姉さんが「行け!」って
雑用やら役所へ行ったりのおつかいとかでしたけど。
先生も出てたんだ。

若かりし頃のICARUSさんが出てるとわかるぐらいに
映っているんですか?
あの映画、心斎橋やいつも通る阪急のコンコースなど
雰囲気が全然違って見えてましたね。
監督、すごいですよね。
お仕事、お忙しいのにありがとうございました。
続き、すごーくヒマな時にまた教えてください。
楽しみにしています。

posted: pukupuku
June 10, 2008 12:48 PM

先日、遅い時間にやっと仕事が終わり
何となくつけたテレビで、なんと『ブラック・レイン』をやっていた。
ブレードナンナーを観て、ICARUSさんにブラックレインの
撮影現場での話を聞いた上でこうやって観てみると
以前とはちょっと違った感じでした。
キリンタワーのシーンなど、いくつもの風景が
ブレードランナーのシーンによく似ているなあ、と。
屋台のシーンとか「おっ」と思いましたもん。

さて、「ICARUSさんは一体どの辺に出ているのか?」という
素朴な疑問を持ちつつ、「作業着に着替えさせられ・・・」とあったので
新日鉄の工場での場面かなあ、と思いながら観ていました。

でも結局、わからなかった・・・。
なんか くやしいなあ。

工場で作業着で自転車に乗っている人
歩いている人、トラックの荷台に乗っている人、
本当にたくさんいて、よく見てたつもりだけどわからなかった。
あとから「あ、録画すればよかったんだ」と。ドジでした。
でも、この映画、撮影してるのが、ヤン・デ・ボンだったんですね
知らなかったです。
それに、音楽が良かったなあと思ったら、ハンス・ジマーだったんだ。
今頃気がついた・・・遅すぎですよね。

posted: pukupuku
December 14, 2008 12:04 PM

ちょっと前
久し振りに観たら
ぼくらしき人物に確信が持てなくなって
大変ショックでした タハハ

てなことなので悔しがる必要はありません

で、ハンス・ジマーですが
和太鼓からきてるのかなあ、
音の感じが「ラスト・サムライ」に似てますよね
「バック・ドラフト」も彼でしょ
荘厳な感じがいいですね

それと、現場にヤン・デ・ボンさん
おったかいなあ?
あの「ダイ・ハード」を撮った
2mを超えるスウェーデンの大男でしょ
気がつかなかったなあ

いかん、これでは
「ホンマにブラック・レインにでたんか」疑惑が
浮上しそうですね でも出たんです

posted: ssm
December 14, 2008 05:32 PM

なんだ・・・どこに出てたのか教えてくれないんだー。
ところで
少し前なんですが、ICARUSさんがチョイスしたという
『スター・ダスト』をテレビでやってました。
面白かったー!!
ロバート・デ・ニーロであんなに笑ったのは初めてだわ!!
もう、可笑しくて可笑しくて!
脇役の俳優さん達が豪華でしたねー。
ミシェル・ファイファーの魔女の老け方が超リアル
同性から見たらあれはちょっと怖い。
まるで未来を見るようで・・・・魔女じゃありませんけど・・。

ICARUSさんのチョイス、すごい!!

posted: pukupuku
December 14, 2008 08:01 PM

「教えない」んじゃなくて
今となっては「本人も分からない」トホホなんですが
作業服を着た工場従業員の帽子姿で
自転車乗ってて
橋の中央でトラックとバイクが交錯して
マイケル・ダグラスが捕まって
の前後の何処かにぼくがいます。いるはずです。
正面からではないので「アッ」という感じではありませんが
是非特定してみてくださいね。
ところで
ロバート・デ・ニーロ、やりますよねー
このオジサン、ときどき面白いことやらかしてくれます。
という訳で、近々『未来世紀ブラジル』を取り上げます。

posted: ssm
December 17, 2008 06:16 PM




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