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◆『複雑な世界、単純な法則』 マーク・ブキャナン

複雑な世界、単純な法則  ネットワーク科学の最前線




たとえば今、あなたはジョニー・デップに会いたいとしよう。
で、友人に声をかけ彼に近そうな人を尋ねてこれを繰り返す。
そうして、何人の人を経由したら彼に会えると思いますか?

世界はインターネットを通して嘗てない程に
情報やコミュニケーションの距離と時間を縮めた。
世界は確かに狭くなった印象がある。
でも、本当にこの世界は狭いのか。
そこには何か根拠や法則でもあるのだろうか。

ここで冒頭のクイズに戻る。
世界の人口は既に70億近い、そんなに「広い」世界で
全く面識のないハリウッドスターの彼に繋がるのには恐らく
相当な数の友達の輪が必要だと思いません?

答えは6人。

そう、たったの6人!

それだけの人間を経由すれば憧れの人に繋がるのだ。
これを「6次の隔たり」と呼び、それが特別な場合だけではなく一般的にも
成り立つのがこの社会的世界(social world)の特徴であるらしい。
70億近い人口の広がりがありながら、何故6人で済んでしまう程に狭いのか。
(これをスモールワールド(small world)「狭い世界」と呼ぶ)
それには一体どのような秘密が隠されているのか。

例えば、インターネットの世界は勿論アメリカの電力網と線形動物の神経系も
同じスモールワールドのネットワーク構造になっているらしい。
人間の脳内の神経細胞を繋ぐネットワークも同様の組織的構造を持っている。
それだけではない、生体細胞内で相互作用をしている分子群のネットワークも
同じ構造であることが分かってきたのだ。
これはつまり、物理的な世界でも人間の世界でも同じネットワーク原理が
作用していることを示している。不思議ではないか。

本書は、このようなスモールワールドのネットワークの解明を通して
(といってもまだ完全に解き明かされてはいない)
数々の発見や特徴的な現象について言及してゆく。

中でも、本書で取り上げられているインターネットのネットワーク地図と
ビール酵母のたんぱく質間の相互作用を示す図とが構造的に酷似していることに
単純に驚いてしまう。
また、インターネットのネットワーク地図は、ガラスにできる氷結の模様にも似ていて、
これなども単に「似ている」だけではないメカニズムがあるようだ。

このスモールワールドの構造は混沌と秩序の中間にあるような構造らしいけど
それが「あなたまで6人」という現象になるところが何ともロマンチックだ。
実際、ミュージカルにもなっていて
何だか夢がそう遠くないようにも思えてくる話ではないか。

posted:susumu150108

コメント

「六次の隔たり」の実証的根拠になっているミリガンの実験結果(1967年)が、
実はそのような結論を得る内容でなかったという残念なお話です。
彼が無作為に選んだ160人の人を対象に行った実験で
実際に目的の人に手紙が届いたのは42通であった。到達率は26.25%。
そして、到達した手紙を調べると到達するのに経た人数は平均5.5人だった。
総てが「6人」で届いた訳ではないし75%は届かなかった、という結果は重要だ。
また、それほどにスモールネットワークの世界は複雑だということだですな。

posted: ssm
May 3, 2008 05:03 PM




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