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◆『ワンダフル・ライフ』スティーブン・J・グールド

ワンダフル・ライフ―バージェス頁岩と生物進化の物語 (ハヤカワ文庫NF)
←これは文庫本の表紙。単行本のデザインの方がいい。




今から5億7千年前の「カンブリア紀の爆発」と呼ばれる
巨大な生物デザインの実験室の如き時代のお話

それは1909年カナディアン・ロッキーの山中にあるバージェス頁岩で
ウォルコットによって発見された化石に始まる。
彼はその化石の中に現われる古生物たちを
単純から複雑へ向かう「伝統的な生命観」に従って整理・分類していった。
以後50年以上にも渡って、そのまま信じられてきた。
だが、それはまるで見当違いだったのだ。

ウェッティントンというケンブリッジ大学の教授が1971年に発表した論文は、
ウォルコットの解釈に再検討を加えるものだった。
それは、これまでの生命観そのものを改めなければならないことを、
また、進化の帰結として人類が存在しているわけではないという真実をも
ぼくたちに突きつけてくる。

進化は単純から複雑へと系統樹のように進む、というほど単純なものではない。
もう一度生命誕生の時代にリセットできたとしても、
今のぼくたちとおなじ人類が存在するかというと極めて危うい。
この生命のプロセスは1回しかないということだ。

前世とか来世とか言っている場合ではないのである。

よく考えてみるとこれは本当に凄いことで、
この世界は奇跡の連続でできあがっているということなのだ。
だからこそ、ただ一度きりの「ワンダフル・ライフ」なんだなあ。

この中に登場する、アロマノカリスとかオパビニアなどは
NHKのスペシャルで動く模型まで作られていたから
今は知らない人はいないだろうけど、その魁となった本ではないか。

作者のスティーブ・J・グールドは、
『利己的遺伝子』のドーキンズとともに人気のある科学者であったが
残念ながら数年前に他界した。

この本を読むと、既成の概念に縛られてしまう人間の弱さと
5億年以上も昔に起こった生命デザインの不思議と
かけがえのないたった一度の
生命史の輝きの中にいる自分に驚かざるを得ない。
“What a wonderful world!”

posted:susumu240108

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