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◆東京オペラ三昧

先日、設計した東京のギャラリーTOoPを1年ぶりに訪ねた。
あの空間で繰り広げられる吉岡俊直のインスターレーションを
是非観たかったのとギャラリーの今を見かったからだ。

もちろん東京見物がしっかり楽しめるように日程は一泊にして、
見たいものや行きたい場所を予めチェックしてのお上りさんモード。
初日は、その日から始まる第2回恵比寿映像祭をちょっと覗いて
それから広尾のギャラリーに出向き、
あとは夜の町に繰り出すという予定だった。
恵比寿映像祭のプログラムの詳細はネットではよく分からず
好奇心だけで出向いてみたら、4時から始まる映画が
ゴダールの『あるカタストロフ』と
坂本龍一+高谷史郎の『LIFE-invisible,inaudible….』。
おまけに、映画のあとには坂本龍一と高谷史郎両者の対談があるとか。
TOoPに行く時間は少し遅くなるけどこちらも面白そうなので
チケットを買い、上映までの30分あまりの時間で
地下1階から地上3階までを会場とするインスタレーションを駆け足で観た。

4時には会場は満杯になりやや遅れて上映。
『あるカタストロフ』、それはゴダールが過去の映画のシーンを使って編集した
上映時間1分の短い映画だった。「う~ん」と自分の未消化に唸っている間に、
今度は『LIFE-invisible,inaudible….』が。
独特な透明感と不透明感を感じる映像、とその背後で流れるノイズのような音。
映像も音も抽象と具象を自在に行き来する。
どんどん引き込まれて遥か彼方まで連れて行かれる、
『2001年』のボーマン船長のような気分になった。
とても不思議な感覚だ。
終わったときはまさに地上に帰還した感じがした。
凄い。

あとの対談にも後ろ髪を引かれたがこれ以上は遅くなれないので
タクシーに乗ってギャラリーに向かう。

山王ホテルの前で降りて信号を渡る。
懐かしい風景だ。隣のビルは今も工事中だ。
少しドキドキしながらエレベーターのボタンを押す。
着いた。1年ぶりのTOoP。
照明を落とした中で繰り広げられる吉岡俊直の映像世界。
2年近く前、このギャラリーのオーナーに教えられて観たのが最初だった。
緻密に計算され溶けて行く空間の一部。
何処かズブグリュー・リプチンスキーに通ずるシュールなユーモア。
畳にぶちまけた、かに見える色の数々が美しい。

暫くいて、余韻に浸りながらギャラリーを出た。
すっかりモダンになったフランス大使館を横目に広尾の駅に向かう。
ホテルにチェックインして身軽になって友と合流し
さあ、今度は東京の夜だ。

金曜日だから何処もかしこも人人人。活気がある。
腹ごしらえをして、行くならやっぱり1年ぶりの『三文オペラ』でしょう!
という訳で渋谷の道玄坂を目指す。
その日は、たまたま1年前に初めてお邪魔したときのお店のメンバーが
そっくりそのままおられてびっくり。みんなが覚えてくれてこれまたびっくり。
お店の中は満杯の大盛況。
数日前に引いた風邪でいまいち調子がでないがそこは勢いで騒いじゃう。

カウンターの斜め前にひとりで来ていたお客さんの桑田風の歌い方が上手い。
聞けば、その日が『三文オペラ』デビューだというタムラさん。
「素顔のままで」桑田風をリクエストしたら素晴らしい熱唱に大拍手。
斯くして東京の夜は更け、
ぼくたちは更なる夜の街になだれ込んでいったのだった。

朝、フロントの電話に叩き起こされた。
えっ、もうチェックアウトの時間過ぎてる?
まだ、ギンギンに酒が残っている。顔が赤い。
とりあえず身支度をしてチェックアウト。
ロビーで昨日コンビニで買ったサンドウィッチとコーヒーを流し込み
ホテルを出る。

まずは上野公園内にある東京国立博物館の法隆寺宝物館に行った。
谷口吉生設計の徹底したミニマルな空間構成が清廉で美しい。
ディテールは最早定番の観がある。

やや脱水症状気味の体を引きずりながら『伊豆栄』に向かい
冷たいビールとうな重を頂戴する。

気分もしゃきっとした。今度は東京オペラシティーだ。
セシル・バルモンドの「エレメント」とICCでの「可能世界 空間論」を観る。
彼の存在は、彼の著書で磯崎新訳の「9」が最初だった。
とてもユニークな本で、彼には数字が抽象的な記号ではなく
色や匂いを伴う生き物として見えているのが如実に分かる。
彼の構造解析のプロセスも、一見アクロバッティックに見えても
彼の目には力の流れがはっきりと見えているかのようだ。
コンピュータに頼ってはいない。明快なイメージを持っている。

会場に設営された「H-edge」はそれを具現していた。

「可能世界 空間論」は、CGなどが産みだす映像の世界と人間の
インタラクティヴな関係をテーマに体験型の展示が
セシル・バルモンドのそれと比べて何処か対極にあるような感じがして面白かった。

ロビーのカフェでアイスティーを飲みながら、
ライブラリーの本をパラパラめくっていたら 突然昨日観た『LIFE』の写真が!
読んでみると、1999年初演のオペラ「LIFE」が端緒になって
『LIFE-invisible,inaudible….』が生まれ、
2007年にはこの場所でそのインスタレーションをやっていたのだ!
これは観たかった。

そのときのパンフレット本を買って充実の時間に感謝しつつ東京駅に向かった。
駅弁とビールを手に新幹線に乗り込んでふと思った。

オペラ「LIFE」、三文オペラ、東京オペラシティ
オオ、何とオペラ三昧なこの二日間だったことよ。

posted:susumu110310

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